鼠径ヘルニアによる男性不妊

男性不妊の問診では既往歴に加えて、鼠径ヘルニアの手術の有無について聞かれることがあります。鼠径ヘルニアとはどのような病気なのでしょうか。また男性不妊とどのように関係しているのでしょうか。

鼠径ヘルニアはいわゆる“脱腸”

鼠径ヘルニアは本来腹部内におさめられている腸が足の付け根付近(鼠径部)に飛び出してしまう病気です。いわゆる脱腸のことで、体の構造から女性よりも男性に多い病気として知られています。鼠径ヘルニアの症状としては、鼠径部の膨らみや不快感、痛みなどが挙げられます。多くの場合、初期は少し腫れを感じる程度でしょう。しかし進行すると最悪の場合、飛び出した腸が戻らなくなって生死に関わる場合もあるので早めの受診・治療が必要です。

手術で精管を傷つけてしまうことが

一般に鼠径ヘルニアが直接男性不妊の原因になることはありません。ただ鼠径ヘルニアは一部の例外を除き、手術が必要な病気です。手術では飛び出したヘルニア嚢を切除する、もしくは飛び出したヘルニア嚢を元に戻して塞ぐ方法が選択されます。“脱腸の手術”というと簡単なイメージがありますが、繊細な手術テクニックが必要であり、子どもの頃に手術を受けた場合はまだ精管が細いため、気付かないうちに傷つけてしまうことがあります。そして大人になり子どもを希望する段階になって、男性不妊の原因になってしまうことがあるのです。

精子は作られるが外に射出されない

鼠径ヘルニア手術の後遺症は男性不妊の中でも「無精子症」の代表的な原因として知られています。無精子症には2種類あって、1つは精巣内で精子が作られているにも関わらず、精子の通り道である精管に問題があって精子が外に射出されないケース(閉塞性無精子症)。もう1つは精子を作る機能そのものに問題があって精子が正常に作られていないケース(非閉塞性無精子症)。鼠径ヘルニア手術による無精子症は精管の欠損によるものであることから、前者の閉塞性無精子症に当たります。
閉塞性無精子症であるか、非閉塞性無精子症であるかは血液検査のホルモン値や精巣容積で判断されます。鼠径ヘルニア手術などを原因とする閉塞性無精子症の場合、精子を作る機能は正常であるため、FSHは正常値を示します。また精巣容積も基本的には正常範囲です。一方、非閉塞性無精子症の場合は精巣機能が低下しているため、FSHは高値に、精巣容積も萎縮により低い値となります。

精路再建は難しく顕微授精の適応に

閉塞性無精子症の場合、基本的に精子を作る機能は正常であるため、欠損した精管を再建して精子の状態が良くなれば自然妊娠の可能性も考えられます。しかし、幼少期の鼠径ヘルニア手術によるものは年数が経過しており、残念ながら再建手術は非常に難しいと言われています。したがって子どもを希望する場合は、MESA(精巣上体精子回収法)やTESE(精巣内精子採取術)によって精巣から精子を回収し、顕微授精へと進むケースがほとんどです。
なお、鼠径ヘルニア手術などが原因による閉塞性無精子症では90%以上の高確率で精子回収が可能だとされています。男性不妊には様々なケースがありますが、その中でも不妊治療という医療の力を借りることで、妊娠へ向けて大きな期待を持てるケースだといえるでしょう。

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